お客様の声
「LINE Xenesis株式会社様」

<PM支援背景>
2023年6月に改正された犯罪収益移転防止法の「暗号資産の移転に係る通知義務」(トラベルルール)に対応するためのシステムを開発する必要があったが、法律の制定と並行してプロジェクトを進めなければならなかった。法律や業界団体の動きをキャッチアップしながらプロジェクトを進めるという柔軟な対応が求められるなか、プライム・ブレインズはどのようにプロジェクトを進行していったのか。依頼を決めたLINE Xenesis社に、詳しく話をうかがいました。
※トラベルルールとは 「利用者の依頼を受けて暗号資産の送付を行う暗号資産交換業者は、送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知しなければならない」というルールです。このルールは、FATF(金融活動作業部会)が、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策についての国際基準(FATF基準)において、各国の規制当局に対して導入を求めているものです。
※参照元:日本暗号資産取引業協会( 202203-travel_rule.pdf (jvcea.or.jp)

LINE Xenesis株式会社 取締役COO

米山 裕介様

LINE Xenesis株式会社 執行役員

岡本 有生様

株式会社プライム・ブレインズ ITコンサルティング部長

釘宮 武郎

――結果を出してくれる企業に依頼するということが大前提

米山様

暗号資産に関わる新しい規制が始まることとなり、これに対応できる体制を立ち上げなければならなかったのですが、社内要員が逼迫していたこともあり、PM支援として外部のパートナーの力を借りることにしました。

釘宮

PM支援を行っている企業は弊社以外にもたくさんありますが、なぜ弊社を選ばれたのでしょうか。

岡本様

そもそも暗号資産交換業は歴史の浅い業界なので、十分な知見のあるパートナーは多くないだろうと思いました。事業や業界の知見という軸ではなく、最後までやり切ってもらえる会社に依頼したいと考えていました。

釘宮

過去に最後までやり切ってもらえなかったという経緯があったということでしょうか。

米山様

実はプロジェクトマネージャーを派遣してくださいとお願いするのは初めてではなくて、過去には、他社に依頼したこともありましたが、我々が求める水準に達していないケースがほとんどでした。このような背景もあり、それ以降、外部に依頼することはありませんでした。
とはいえ、期日が迫る中で社内要員もアサインできず、社内ポリシーなどと言っていられない状況であったため、前職の際にご一緒し、しっかりと結果を出してもらえたプライム・ブレインズさんならということで、依頼することにしました。

釘宮

ありがとうございます。

――詳細が定まっていない新しい法令に対して試行錯誤しながらのプロジェクト

米山様

特に今回主だってお願いしたのが、トラベルルールへの対応でした。トラベルルールへの対応には、暗号資産交換業独自の知識が必要なため、そこを素早くキャッチアップしていただくということがプライム・ブレインズさんへの期待でした。

釘宮

私自身ブロックチェーンに対して少し興味がある程度で、具体的な事業者としての業務等は全く知らない状態でした。その点に関しては、米山さんに教えていただいて、かなり詳しくなったという自負があります。

米山様

ビットコインの投資が好きという方は結構いるのですが、事業として関わる上では更に深い知識が必要になります。つまり暗号資産に関する知識だけでなく、その基盤技術であるブロックチェーンを理解することが必要になる訳です。この点を考えると、やはり信頼できるパートナーが必要です。これが委託先を決める上で高いハードルとなっていました。

釘宮

最初はもう本当に何もわからない状態でした(笑)。

岡本様

さらに、この案件の特殊なところは、プロジェクト開始時点で見通しすら立てることができない状態だったというところでした。そもそも規制の内容が固まっていないという状況だった訳です。ザックリとした規制があるよという情報があるだけで、具体的な規制の中身が固まる前に動き出さないと間に合わないという案件でした。本当にやりながら、という感じでしたね。

釘宮

はい。そのようなこともあり、まずはトラベルルールで使うソリューションパッケージを選定するところから始めました。日本国内では各暗号資産交換業者が同時に対応することが求められていたため、他社の採用実績で選定することができず、また、候補となる各ソリューションの違いに関する情報がない中で各ドキュメントを読み込んで仕様を理解することで選定の検討を進めていきました。
様々な背景やソリューション毎の相違点を考慮して選定すべきソリューションを提案したのですが、これで何とかスタートができたというような感じですね。

米山様

おそらく御社以外の会社に依頼したら、方針を出さないとやってもらえなかったと思います。でも決っていないことは決っていないので、方針を出すことができない状態でした。プライム・ブレインズさんはその点、能動的に情報を取りに行ってくれました。自ら学習コストをかけていただいた点は特にありがたかったですね。

――未知の領域にも積極的に働きかけ道を作っていく

米山様

実際に動きだしてみて、ここ大変だったというところはどこでしたか?

釘宮

ソリューションパッケージを提供している会社は海外の会社だったのですが、そのソリューションパッケージが個人情報を暗号化してない点が大きな問題でした。暗号化していないと日本では導入できないという点を説明し、交渉して暗号化される様に改修してもらいました。また、LINE Xenesisさんが通常使っているデータベースソフトとは違う製品が使われていた為、このままではLINE Xenesisさんが運用する上で大きな課題となってしまうということが分かりました。難しい交渉ではありましたが、なんとかデータベースソフトを変更してもらうことができました。これが一つの山場でした。

米山様

暗号資産関係はまだ若い金融業種であり、ソリューションパッケージも成熟していないのですが、従来からある金融業におけるパッケージのあるべき姿の様なものが釘宮さんの頭にあったことで、この観点に気づくことができたのだろうなと思います。おそらく、暗号資産交換業界では、業者間で情報交換するようなことは今回が初めてであるはずです。トラベルルール以前は犯罪が起きた場合には警察や金融庁などに提供することはあっても、暗号資産交換業者間での情報の交換まではありませんでしたね。

――企業の枠を超え、業界の中で新たなレールを敷いた

釘宮

またこの案件は、他社さんと仕様を合わせなければならなかったことがプロジェクト推進上の困難な点でした。お互いに仕様をすり合わせる場面もあり、そういったと局面でもお役に立てたのではないでしょうか。

岡本様

当社が音頭を取っていたわけではありませんが、仕様決めに関しては当社がリードをする場面もありましたね。

釘宮

ソリューションの仕様理解についてはリードして行けたと思います。

米山様

割と早くに環境を作った点が進め方としては良かったですね。

釘宮

ローカルPCに検証用環境を構築して、システム構成を確認しました。早い段階から環境を手元に用意したことが検討を早期化する上で役に立ったのではないかと思います。

岡本様

当時はまだ環境を作っていない会社がいっぱいあったでしょうね。

釘宮

環境を実際に作ったことで、暗号化がされていないことなどに気付いて早めに対応依頼をすることができました。この点は他社さんに対しても貢献できたのではないか思います。

岡本様

プライム・ブレインズさんに積極的に推進していただいて、正しい方向に進めてもらえたことは業界的にも良かったと思います。

米山様

そんなこともあり、実は他社さんから「トラベルルールの件ではお世話になりました」って言われました(笑)。

――プロジェクトになくてはならない心強い存在に

米山様

釘宮さんは既に把握していると思いますが、当社は開発陣の裁量がとても大きいですよね。普通の会社に比べるとエンジニアが率先してシステムを作っていく訳です。そのあたりの普通の会社との相違点についてはどの様に感じましたか?

釘宮

普通はユーザ部門が決めたら仕様を翻す提案が開発から返ってくるといったことはまずありませんね(笑)。

米山様

そうですよね。本気で開発側が提案してくる。その分エンジニアのモチベーションが非常に高いので、いいことの方が多いのですが、今回のプロジェクトでは法令要件が前提であり、仕様面での理屈ではないという点も多く、開発側に理解してもらうための苦労はあったと思います。

釘宮

開発に先立って多くの要件を取捨選択する必要がありました。開発側が削るべきと考える要件に対して、これは法令上の必須要件なので削減できないが、これだったら削れるといった会話をしながら何とか実現可能な要件に収めることができました。

岡本様

ユーザの立場を理解した上で技術面を考慮して開発との議論の場に立ち会っていただけるのはとても心強かったです。

釘宮

ありがとうございます。

米山様

社内でさまざまな部署のメンバーにプライム・ブレインズさんに関してヒアリングしてみましたが、ありがたいことに、各部署からの評判が良く、絶対に外しちゃダメだと強く言われました。

岡本様

私は強く言いました(笑)。

米山様

少しでも異論がでると、発注の継続が難しくなるという状況でしたから、契約の継続に際してとても社内調整がやりやすかったです。
来年も暗号資産交換業の業界は規制強化があるので。その際はまたよろしくお願いします。

釘宮

こちらこそよろしくお願いします。